今月の特集   第2回ハッピーサイクルフォーラム開催!
ハッピーサイクルをつくりだす女性の脳/田中(貴邑) 冨久子さん 田中(貴邑) 冨久子さん
脳の働きと女性ホルモンの関係の研究を続けられている田中(貴邑)冨久子教授。女性のサイクルがどのような仕組みで生まれ、ココロとカラダにどのような影響を与えるのか、そして女性は自分のサイクルをどのように向き合っていけばよいのかをお話いただきました。


女性の周期は脳と卵巣によってつくられる
Q: 女性の月経周期と脳の関係について教えて下さい。
A: ヒトでは周期的に排卵が起こって、妊娠しない場合は、周期的に月経が起こります。この周期的変化はすべて、卵巣から女性ホルモンが周期的に分泌されておこるわけですが、この調整には、脳の視床下部と下垂体前葉、卵巣が一体となって周期的に機能することが必要不可欠です。つまり、一般に「女性周期=月経周期」だと思われていますが、この周期のもとにあるのは、実は卵巣周期であり、下垂体前葉の周期であり、視床下部の周期、つまり脳の周期なんです。
Q: 視床下部、下垂体前葉というのは何ですか?
A: 視床下部と下垂体には人間の身体の調子を調節するためのホルモンをコントロールする大事な役割があります。視床下部は様々なホルモンの血液中の濃度を常に監視して、身体が正常に働くためにちょうど良いように下垂体に対して指令を出しています。視床下部と下垂体の連携によって微妙なホルモンバランスが維持されて、その結果、身体の内臓や組織が正常に働くのです。例えば、女性の月経周期に大切な卵巣ホルモンの1つ、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌されるメカニズムは、

視床下部: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン
下垂体前葉: 卵胞刺激ホルモン+黄体形成ホルモン
卵巣: 卵胞ホルモン(エストロゲン)+黄体ホルモン(プロジェステロン)

となっていて、女性の月経周期は脳によって微妙に調節されているのです。
ですから、過度なストレスや激しい運動、乱れた食生活(ダイエットなど)の情報が視床下部に入ると、簡単に卵巣の機能がうまく働かなくなって、排卵障害や月経障害をおこしてしまうのです。
エストロゲンが多い時期は活動的に。プロゲステロンは安静を促す
 
Q: エストロゲンは脳に影響を与えるのでしょうか?
A: エストロゲンは実は麻薬みたいにとてもよく効くんです。エストロゲンは、「古い脳」である視床下部に働いて月経周期を作り出すだけではなく、ヒトで非常に発達している「新しい脳」と呼ばれる大脳新皮質にもかなり影響を与えると言われています。「新しい脳」の機能としては認知・学習・記憶・言語機能・運動機能・意思や感情など。「古い脳」の機能としては、月経周期を作るだけでなく、情動を始め、食欲や性欲の調節など。月経周期の中で、卵胞期には排卵するために発育した卵胞からエストロゲンが多量に分泌されます。だから卵胞期には「新しい脳」も影響を受けて、頭がさえたり、うまくしゃべれたり、瞬発力があがったり、感情がゆたかになったり、また「古い脳」も影響を受けて、性欲がわいたりもします。エストロゲンが多い卵胞期は、女性がいちばん活動的で魅力的な時、と言えますね。
Q: 女性周期に関係しているもう1つの女性ホルモン、プロゲステロンはどうですか?
A: 排卵をさかいに分泌され出すプロゲステロンは、妊娠を想定して分泌されるので、身体を安静にしようと働きます。ですから、プロゲステロンの多い黄体期には、女性は全体的にシャープとは対極にあります。プロゲステロンにはエストロゲンの作用を抑えたり、麻酔作用があると言われていて、脳機能を抑えるように働くのです。だから、プロゲステロンが優位になる黄体期には新しいことに無理をして取り組んでイライラするよりも、慣れていることを淡々とする、というのが良いかもしれません。
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profile
たなか(きむら) ふくこ
生理学者、医学博士。横浜市立大学医学部第2生理学教授、専門は生殖生理学、神経内分泌学、脳科学で、とくに脳の働きと性ホルモン、脳の性差などを研究している。
著書に「シンプル生理学」(共著)(南江堂)、「女の脳・男の脳」(NHKブックス)、「性差医学入門ー女と男のよりよい健康と医療のために」(翻訳、監修)(じほう)などがある。



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